その時、守るか、攻めるか。 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

その時、守るか、攻めるか。

<「売る」コピー39の型>を買ってくださった方、その上コメントまで
下さった方、本当にありがとうございます。うれしくて、近所の本屋さんに行って
棚にあるのを取り出し、平積みになっている他の本の上にこっそり置いてきました。にひひ

 
 
アメリカで生まれたシリアル(ケロッグのコーンフレークなど)の
歴史をみると、そこにはアメリカの広告、マーケティング100年の
発達も見ることができる…そんなことをドキュメンタリー番組で言っていた。
 
シリアルが普及するまでに様々なマーケティングが試されてきたのだが、
その方法は今でもよく使われているものばかり。たとえば…
・ベーブルースなど当時の人気大リーガーの写真をパッケージに使う。
・野球場に広告看板を出す(ラジオ中継のスポンサー)
・独自のキャラクター(動物など)を採用。(提案したのは広告代理店レオバーネット)
・当時テレビで西部劇ドラマが人気、それに便乗したキャラクターを使ったり
オマケをつける。
・水曜日お店で店員にウインクすれば無料サンプルを進呈するキャンペーン叫び
…キャラクターやオマケ、昔から変わっていないんだね。
 
店員にウインクというのも笑えるが、これも店頭で合言葉を言うとか
カップルで浴衣姿だと半額で入場とか同じようなプロモーションも
これまたよくやっているし。
フランク・シナトラが性欲促進にシリアルを食べていると言ったことが
記事になり(これはPRの活用?)、さらにヒットしたりもしたとか
 
シリアルは発明されて100年ほど経っているのだが、
その間、砂糖をコーティングしてヒットすれば、
商品名にsugarという言葉を入れたり、砂糖の摂りすぎは
身体に悪いという風潮が出れば、各社一斉に商品名から
sugarを取ったりと、時代のニーズやトレンドに応えながら、
生き残ってきた。
 
砂糖による味付けが、受け入れられなくなると、
鉄分やビタミンといった成分を前面にヘルシーフード
であることを訴求したりと実に、商品のライフサイクルや市場の
成熟度、世の中の空気に敏感に対応
してきたようだ。
 
ひとつの商品、たとえばタバコやクルマの広告の変遷を
みていくと、ライフサイクルやその時々の風潮に
あわせたメッセージになっているのが分かる。

 
広告やPRなどコミュニケーションを考えるとき、
商品とその市場、商品とその業界、商品と社会といった
商品との関係
がどんな状況なのか、いかにそれにマッチした
メッセージを考えるかが肝心。
 
その意味で最近目立っているのが環境保護、
そして安全や安心といった品質に関するもの。
いずれもここ数年の社会の動きやニーズをよく映している。
分かりやすく言うならば、世間の空気を読んだメッセージだね。
次のメッセージも今の商品をとりまく状況をよく表しているなー。
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
「農薬検査」やりすぎだって10年前は言われた。
 
 
英会話学校だって
安心で選ぶ
時代じゃないかな。

 

 
最初のコピーは雪国まいたけ、次のコピーは英会話スクールのイーオンの広告から。
2つに共通しているのは安全・安心の訴求。食品、英会話スクールといえば、
偽装や農薬混入、閉鎖などで信頼を失いかけている業界。
不祥事がなかったら、こういうメッセージの広告は出なかっただろう。
 
安全・安心の訴求は共通しているものの、表現については両者は対照的。
イーオンの言い方はストレート。英会話スクール選びを安心かどうかで
選ばなくてはいけない状況はどうかと思うが、業界に対する不信感が
まだ根強く残っているようならば仕方がない。
 
看板広告ということもあるだろうが、いかに安心なのかについては、
35年の実績という以外くわしくは語られていない。
言ってみればこれは、攻めでなく守りのメッセージ。それでも
知名度のみで選んでいてはヤバイという状況がある中、
安心を訴求することで、新しいイメージを見込み客へ知覚させる
にはいいチャンス
かな。そこまで考えているかどうかは分からないけれど。
 
雪国まいたけのコピーは、この会社らしいと思った。
同社の雪国もやしの「メチャめちゃ高いよ~」のCMに見られるとおり、
ストレートにまじめに言っても目立たない、コピーにもひと手間ふた手間かけたがる
体質があるようで、ここでも表現の強調にこだわり?を見る。
 
「10年前から厳しい農薬検査を行っています。」なんて
普通に言わない。「厳しい検査」を「やりすぎ」と
言い換えることで、厳しさのレベルの表現がぐんと強調される
こういう言葉のセンスは、雑誌やスポーツ紙の見出しに近いよね。
 
このメッセージも中国産冷凍ギョウザのことがなかったら、
発せられなかったかもしれない。
それでも、不祥事などによるネガティブな状況に
(業界の)ピンチは(自社の)チャンスとばかりに攻撃的守備、
あるいは高速広告カウンターで打って出るかで
その先、優位に立つことができるかもというプラス思考で
乗り切るのもひとつの手だ。
(あえて、額面どおり受け取ってもらえない広告で、余計なことを言うのを
控えた方がリスクヘッジとしては有効だという広告人もいる)
 
ところで品質というと、あの有名な広告がすぐ浮かぶ。
DDBが手がけたフォルクスワーゲンの「LEMON.」だ。
LEMONとは不良品のこと。これがキャッチコピー。
 
このクルマは出荷されませんでした~ではじまるボディコピーでは
肉眼で見えない小さなかすり傷やメッキはがれでも見逃さないくらいの
やりすぎ検査をしていること、それがクルマの長持ちを実現していることなど
厳しい検査から生まれる品質について語られている。

見た目では不良品とは思えないビジュアルとコピーのギャップで思わず読んでしまう。
 
VWレモン

 
 
キャッチコピーで「メリットを言え」という。
それは分かってる、問題はどう言えばいいか分からないこと。
そんな時に、コピーの神様を呼ぶ方法あります。
目次はコチラ  

「売る」コピー39の型/有田 憲史

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