大きさなんて、気にしないわ。 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

大きさなんて、気にしないわ。

バカね。小さいとか大きいとか気にしていないのに…
そう慰められても、やっぱり気になるあのサイズ。
誰も気にならないのになぜこだわるの、まったく男って。
  
で、サイズとプライドの話である。
デジカメやケータイの広告を見ていると世界最小、世界最軽量、
世界最薄といったコピーが目につくが、そんなスペック至上主義みたいな
メッセージに、どれだけの人がその商品を欲しくなるのだろうと思ってしまう。
 
自分について言えば、世界一小さいからといって、よほど画期的なレベル
でない限り、欲しいなんて思ったことはない。
持ち物はナンバーワンでないと気がすまないという人以外、
たとえワールドクラスなスペックであっても、ほとんどの人はさほど
興味を持たないのではないかなー
 
それにもかかわらず、広告主は世界一や業界一を強調したがる。
2番目との差がほんのわずかであっても、
バーンとでっかく世界一を入れましょうと意気ごむ。
反対に、わずかの差で世界一に届かないと「これといって特徴が…
どうしましょう」と弱気になる。
電器メーカーの仕事をしていた頃、度々そんな場面に出くわしたものだ。
 
もちろん、自社の技術の結晶を世に知らしめたい気持ちは分かるし、
それは必要だと思う。しかし、そのレベルを数値や最小とか最大とか強調表現で
そのまま伝えたところで、欲しいとか知りたいという欲望と結びつくかというと
あまり期待できそうにない。
 
なぜなら、イメージしにくいから。そのサイズなり重さのレベルが
なんとなく分かっても、商品を使ったときのメリットが想像しにくいのである。
世界一薄いノートPC、マックブックエアーの薄さがイメージできるのは
数値でなく、封筒にも入るという演出があるからなのだ。
 
だいいち、小さいからスゴイとか、軽いから便利という表現で、
みんなが商品を欲しくなるのなら、コピーライターなんて必要ないのだ。
欲しいと思わせたいのなら、小さい、大きいということを言葉や
ビジュアルのアイデアで商品価値に変換して、欲望とつながなくてはいけない

そこが頭の使いどころであり、広告のプロたちはそれでご飯を食べている。
 
  
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
手より小さくなった瞬間、
Video Cameraは荷物でなくなる。

 
 
ビクターのエブリオというビデオカメラのコピーより。
少し前、商品のWEBサイトで見かけた。
デジカメやビデオは、より小さいとか、より軽いとか、よりきれい
といったところでしのぎを削っているので、いつも最小とか最軽量、最薄など
という単語が出てくる。
(もちろん世界一~というお墨付きもくっつく場合も多い)
 
そうした表現では、商品が優れていることは分かるけれど、
もし自分が使うとどんなメリットがあるのか見えにくいのだ。だから、ここは
サービス精神がほしい。小さいということは、あなたにこんなイイことがあると
イメージさせたい
。それが商品価値というやつなのだ。それが伝わらないと、
欲しいなーとは思わないものだ。
 
たんに世界一とか数値のみで語るより、手のひらサイズと言ってみたり、
上のコピーのように荷物でなくなると言ったり、マックブックエアーのように
A4の封筒に入れてみたり…と使う人の立場にたって、想像力のスイッチを
押してあげたい
。数値や漠然とした表現では想像しにくいことを、
くっきりとイメージさせよう

 
 
ついでにもう一つ。
じゃあ他社にイチバンの座を奪われた場合は?
ウリが無くなったからあきらめる?ギブアップすることはない。
そんな時は戦い方を変えてみる。チャンピオンからチャレンジャーの
戦い方へスイッチ
する。
アウェイで勝てなくても引き分けにして、ホームで勝負するといった感じで。
 
たとえばアウェイのテーマが「小ささ」ならば、その差がわずかであれば、
これ以上小さいことが本当に大切なの?他にもあるんじゃない?と最小ということが
それほど重要でないことを言うとかね。
そして、ほかの優れた点(自社が優位に立てる点)で勝負すればいい。商品選びの
ポイントを他のことにスイッチするとかね。そうして受け手の興味のほこ先をそらす
 
自分の土俵に持ち込んで、競合商品の良さを消し、自分のところの商品の
良さを伝える
方法。これがホームで戦うということ。つねに優位な状況をつくりだそう。
 
たとえ一番と誇れることができなくても、クヨクヨしなくていい。
大きさなんて気にしちゃダメよ、あなたにはもっと素敵なものがあるじゃない♪
と言ってあげよう。(オネエ言葉で)
 
それではマックブックエアーのCMをどうぞ。
シンプルなアイデアながらThe world's thinnest notebook.という
タグライン(キャッチコピー)のイメージが強調されて分かりやすい。

 
 
弱者でも逆転できるコピーのアイデアが大盛り。 

「売る」コピー39の型/有田 憲史