君のスタジアムを、サポーターで埋めつくそう。 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

君のスタジアムを、サポーターで埋めつくそう。

久しぶりに見たあなたの笑顔、元気そうでうれしくなりました。
それに相変わらずの人を煙に巻くような話っぷりも健在で、
ユーモアと風刺の間にかいま見えるあなたの情熱がいささかも
衰えていないこともうれしく思いました。
 
思い返せば、あなたが命をかけて咲かせようとした希望の花は、
一度は蕾のままで枯れたかに思えました。しかし、
ものごととは連綿と続くその積み重ねの上に起こるもの、
あなたの育てた芽は枯れるどころか、力強く花開こうと
その時を待っていたのだと先日知ることができました。
それゆえに悲観はしていません。
 
これから、あなたは少し遠くから見守るとのことですが、
タクトをふる姿を見たかったものとしては、いささか残念な
気もしないではありません。
 
しかし、これからもっと多くの花が咲くのを見ることのできる
幸せということでは、新しい楽しみが増えるのだ。そう思っています。
 
いくたびか地獄を見、死線をさまよい、人間や万象の美しさ、
そして醜ささえも受け止めてきたあなただからこそ言えること。
しかも、それはいつまでも色あせない。
この先も、きっと多くの人たちが重みや気づき、含蓄を
あなたの言葉から感じ取っていくことでしょう。
 
もちろん、それらが唯一の正解でないことも承知した
上でです。あなたは神様ではないのですから。
 
それでも、僕たちは時おり聞こえてくるであろう
あなたの話に耳を傾け、行間を読み、何かを感じ、
何かを学ぼうとするでしょう。
 
もしかしたら、これはしばらくの間の
お別れかもしれません。
けれども、やはりあなたの元気な姿を見ると、
こう言わずにはいられないのです。
 
お帰りなさい、オシムさん。
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
動画は、写真の連続です。
 
 
キヤノンの広告より。同社の動画技術を

紹介した内容だが、企業広告でもある。
かっこいいフレーズで決める企業広告も悪くはないが、
やはり優れた商品広告=優れた企業広告となるのが
理想だと思う。

商品にはその会社の歴史や英知、
理念や思いが込められているのだ。
 
それで、このコピー。「言われてみればそうですね」
的な表現ではあるけど、キヤノンが言うと説得力がある。
デジカメもそうだが、ビデオカメラの市場にも
いくつもの会社が参入している。カメラメーカーよりも
オーディオや電器メーカーの方が多い。
 
最近では機能やスペックも拮抗しているので、
なかなか突出するのは大変だ。
だから「包丁ならドイツね」「ワインならフランスね」
なんて、脳内ポジショニング(ブランド認知なんていう時も)
で選択させてみたい気も起こる。
 
静止画1枚1枚を美しく描写する技術があるから~」と
リードコピーにあるように、カメラメーカーとしての
自信と矜持が、受け手にとっては信頼に映るかもしれない。
もちろん、そこは自負があるから威張ったりせずに
スマートにさらりと言ってみる。
 
同じコピーを、たとえば松下やビクター、カシオが
言うと、価値の落としどころがよく分からないから、
優れた技術であっても、アドバンテージとして
受け止められるかどうか不明。
 
サッカー前代表監督イビチャ・オシムさんは復帰会見 の中で
再び、日本サッカーのイノベーションの方向性を示している。
それは監督就任時でも言ったことだ。それはすなわち日本代表の日本化。
 
(サッカー強国の)まねをしても彼らを超えることはできません。
まねは良いことではありません。ですから、日本はコンプレックスから開放されて、
自分たちのストロングポイントを自覚することが必要だと思います

 
ビジネス界でもさんざん言われてきたことだ。賢い人生のわたり方
でもある。オシムさん、貴方はフットボール界のドラッカーのようですね。
 
先のコピーは、キヤノンのストロングポイントだからこそ説得力がある。
5日の日経新聞にビデオカメラのランキングが掲載されていたが、
専門家による評価で(各社が推す18機種の中で)一番ポイントが
高かったのがキヤノン、一ヶ月の販売台数では3番目。
 
そんなパワーブランドであっても、激しい競争の中では
「動画も、キヤノンで美しく」と、つねにストロング
ポイントの訴求はさぼれないということだ。
2番手下ならなおさら。

 

強みを見つけたらスピーディに受け手の脳内に攻め入る。

その高速カウンターを広告やPRが支える。
 
最初は小さなことでも、使う人にとって価値あるものならば
磨き続けることで、それはいつのまにか競合からの
参入障壁となる
のだ。ホームとなる自分のスタジアムを
つくり、サポーターで埋めつくそうじゃないか。
相手は萎縮して力が出ないかも。
 
貧しい国が金持ちの国を倒してほしいです。金で選手が買える国や、
勝って当然という国が勝ったらつまらないじゃないですか

つくづく痛快なじーさんだ。
サッカーのせいで病院に運ばれたけど、サッカーの力で戻ってこれた」と
笑わせてくれるけど、リハビリ中でもサッカーを学ぶことを止めなかった
情熱と向学心には驚嘆するだけだ。
 
僕たちも、まだまだ学ばなくちゃね。
 

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