みんなの不安は、蜜の味。 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

みんなの不安は、蜜の味。

アメリカの大統領予備選でのバラク・オバマの躍進に
便乗して、勝手応援なる運動でちゃっかりと全国へPRした
福井県小浜市のことをニュースで見ながら思ったものだ。
 
うまいことやりよるな。それなら、僕も思いつく。
月に一度の火曜日の大セール
“スーパーチューズデー”はどうかと。
ところが、近所の商店街やスーパーではそんな
イベントをやっているふしは全くなく、つまんないなー
とふてくされるわたくし。
 
もし、この秋の大統領選挙で共和党のマケインが勝てば、
どんなに不利でも負けいん!とマケイングッズを
考えると売れるかなとほくそ笑む。
 
こういう商売のやり方を、世間では便乗商法と言う。
別に卑怯な手ではないのだが、どうも他力本願というか、
人のふんどしで顔を拭く 相撲をとるようなやり方が
ネガティブな印象を与えるようで評価されにくい。
 
まぁクリスマスセールだって便乗商法だとは
思うのだが、きっと「便乗」や「商法」という言葉が
マイナス印象を作っているのではと思う。
そうならば、最近ビジネス書のタイトルや金融方面で
使われているカタカナを使ってはどうか。
 
で、考えたのがレバレッジ商法。レバレッジというのは
テコのことで、小さな力(資本)でもテコの原理で大きな
力(リターン)をもくろむイメージとしてはOKな感じ。
「商法」もセールスやマーケティングに差し替えれば、
なんとなく格好がつく。少なくともネガティブな印象はなかろう。
 
でも、レバレッジ・マーケティング。それは何?と

聞かれれば、簡単に言えば便乗商法だよと

答えた方が分かりやすいのが悲しい。

 
分かりやすさVSカッコよさ、ま、どうでもいいですが
世の中の状況や空気をレバレッジすれば、メッセージも
強くなるかもしれないなー。
(簡単に言えば、世の中の空気に便乗しろやということで‥)
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
バター不足の折ですが…。

 
 
北海道の菓子メーカー六花亭の広告より。
創業75周年の広告なんだけど、いきなり
「このたび当社は~」なんて定型的なことでなく
バター不足という誰もが痛感している、世の中の
状況から語りだすところがミソ

 
その中で、あくまでマーガリンなどの
代替品を使わずにバターにこだわると言う。
そうでないと今まで守ってきた味が変わるから。
 
それは分かるとして、もしバターが手に
入らなくなったら、確保している分だけしか
お菓子を作らないと言う覚悟には驚く。
逆風にさらされてもなんとか変化に対応していく
のが生き残る道なら、こだわりに殉ずるのも
のれんを守る道
か。
 
これってアメリカ産牛肉にこだわった
吉野家と似ていますね。
以前、吉野家が倒産したとき、コストダウンのために
フリーズドライの肉や粉末のつゆを使ったため、
味が落ちてますますお客が離れていったのを思い出す。
お客は、ごはんに牛肉の煮込みがかかったドンブリでなく、
吉野家の牛丼が食べたかったんだね。
 
話を表現に戻すと、世間の状況や人々が感じている
(に違いない)ことを添える、あるいは便乗する

いうことで、メッセージを読ませる力やその中味に
対する共感を強める
ことができる。
 
バター不足のことが冒頭にあるから、
すわっ値上げかとか大変なことが起こるのかという
関心を引き込むフックの強さも含めてね。
 
オリンピックがあるので、大型液晶テレビを売ろう!
というタイミングをいかした便乗商売と同じように
広告のメッセージもタイミングをテコにすれば
強さも増幅されるというもんだ。
 
最近の広告を見ていると、そういう表現が目につく。
たとえば、JR西日本のエキスプレス予約の広告では、
 
なんでも値上がりの時代ですが、
せめて出張や観光はおトクに。

 
なんて言っているが、値上がり続きの今
(そしてそれをメディアが盛んに取り上げる今)
だからこそ、おトクなネタがいつもより際立ち

つい目がいく
世の中のすべての商品が値上がりしている
んじゃないかという錯覚も作用するけど。
 
その風は、ある商品にとっては向かい風かも
しれないが、ある商品にとっては追い風
となるわけだ。
原料高騰のいま、パンにとっては向かい風でも、
お米(ご飯や関連商品)にとっては追い風だろうし、
車の広告でも今まであまり訴求してこなかった燃費の
良さを強調するというのもひとつのアイデアかもね。
 
世間の空気という状況によって、どのように
商品価値が切り取れるか。それをどういう表現で
最大化させて伝えるか。
バター不足や値上がりの時代という言葉を
使うのもまたひとつのアイデア。

 

まぁ世の中の不安は蜜の味ということですか。
最近はエコばかりだけど、ピンチはチャンス、
向かい風に便乗、いやレバレッジを効かすこと
だってアリなのだ。
 
ところで、ここ最近の値上げラッシュ。
僕らのアイデアや制作のフィーも値上がり…
という噂をなぜか聞かない。
物価の優等生といわれる卵だって値上げするのにだよ。
あ、もしかして僕たちはニワトリ以下ってことですか?
ああ、そうですか。そうですか。むかっ
 




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