ワタシはコトバ、オシャレもしたいの。 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

ワタシはコトバ、オシャレもしたいの。

そのとき、テレビから聞こえてきた言葉に、
おや、洒落たことをいうじゃないかと思わず反応。
テレビの中で料理研究家は、こんなことを言ったのだ。
「ナスの瑠璃(るり)色が‥」とね。
 
その言葉につられて画面に目をやると、
そこには揚げられたナスがお皿にお行儀よく
盛り付けられている。ナスの色がでもなく、
ナスの青色がとか紫色でもなく、瑠璃色なんて
言うもんだから、なんだかナスが油の照りと
も相まって艶っぽく見えてしまう。
 
面白いもので、これが言葉のマジックというのか、
化粧と同じように言葉にもすっと紅を引いてあげると
あれ、不思議。ベッピン度が増すもんです。口紅
「お、ナスの姐さん。今日は一段と艶っぽいね」
「あら、そう。うれしいことを言ってくれるじゃないか。
新しい紅をつけてみたのさ。ま、これから食われて
しまうんだけどね、ホホホ」ってな感じで。
 
たかがナス、されどナス。
ナスがままに(←はい、ココ笑うとこグッド!
写実しても伝わるし、理解もできる。
でも、ナスの色は青紫と言い切ってしまえば、
どこまでいっても青紫。そこから想像は広がらない。
 
ところが、瑠璃色というと(瑠璃色がどんな色彩か
分からないと困るけど)、脳内にほわんと趣が
立ち上り、ナスの色が艶やかに見え、美味そうに
感じてしまう。少々大げさですが。
 
伝われば十分という類もあるけれど、
読み手の脳内を刺激する、想像を広げるような
言葉で表現する心意気は大切にしたいじゃないか。
とりわけ広告のコピーにはそれが必要なんだけど。
 
ということで、どうでしょうか。
ナスの次は、ニンジン。一本でもニンジン。
ジンジンジン、僕らはニッポンジン。
(注:別に変なクスリはやっていません)
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
一年に一度の贅沢です。
まろやかに甘い、
冬にんじんのしぼりたて。

 
 
通販限定のカゴメの「冬しぼり」の広告より。
ここのところ、山椒のような小粒でもぴりりと
辛いコピーが少ないので、半年前の広告を
引っ張り出した。
 
それで、「一年に一度の贅沢です」という表現が
いやにベッピン言葉なんだな。このフレーズがなくても、
冬季限定とか旬のおいしさ、数量限定なんて言葉が
使われているので、言いたいことは伝わるし
マーケティング的引きもある。
 
でもね、一年に一度の贅沢という表現が
伝えたいことの価値を最大にしているように
思えてくるわけ。商品のモノとしての希少性の
価値は分かるけれど、それを味わうコトの価値まで
感じさせ
、想像させればもっと欲しくなると思いません?
 
モノの希少性を、旬のおいしさを味わう喜びという
コトへと拡大して言ってあげることで
イメージをくっきりさせる
というのかな。
 
それを「贅沢」という平易な言葉で表している
ところが良いんだね。
日々の暮らしの中で、大きな贅沢は無理だけど
小さな贅沢ぐらいは楽しみたいやねと思うのが人情。
 
丑の日には奮発してウナギを食うぜとか、昔の
我が家のように「お父さんのお給料が出たから、
今日は奮発してビフテキよ!」
なんて奮発したくなる力があるんじゃないかなと、
一年に一度の贅沢という言葉にはさ。
 
でも簡単な言葉だから、簡単にできそうだと
思ってしまうかもしれないが、案外難しい。
限定とか旬を、年に一度の贅沢へと変換するのは、
けっこう頭使いますよ。それでも、普段何気なく
使っている言葉にヒントがあったりするから、
耳をすませておこうよ。
 
ところで、ナスの色についてだが、
調べてみると茄子紺というそのまんま
ナスがまま(←はい、ココ笑うとこグッド!)な
言葉もある。他にも濃い青色系では紺青、
群青、藍、褐(かつ)、紫色系では紫紺、
濃紫、暗紫色、江戸紫などと
実にいろいろな言葉がある。
 
まぁこじゃれた言葉を使えばいいというわけでなく、
話すにしろ、書くにしろ伝えたいことの価値や意味、
そのイメージを最大化するという努力は
忘れたくないもの。
言葉の使い方ひとつで、うまみが引き出されたり、
ベッピンになるわけですから。
スゴイとかカワイイとかビミョーとかヤバイだけで
おおむね通じちゃったら味気ないじゃありませんか。
 
音譜ワタシはコトバ、おしゃれもしたいの。
 
 
そういえば、この人の歌には
「Mr.ブルー」とか「パープルタウン」とか
ナスの色味に近い色の名がついた、ヒット曲が
多いことに気づく。もっとも有名なのは「みずいろの雨」。
そんな色したナスはないけどさ。
オジサンは「思い出は美しすぎて」や「夜間飛行」が好きです。
(昭和ポップ・アーカイブその2)