コトバ強さ倍増計画 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

コトバ強さ倍増計画

冬になると、近所の池にカモなど

渡り鳥が飛んでくる。
当然、見物客も増えるわけで、池のほとりには

おきまりの文句が書かれた立て札を周辺の

あちらこちらで見ることになる。
 
カモにエサをあげるのは禁止です
 

その下にやや小さな文字で、
「人間の食べるものには塩分や油分が多く、
野生の鳥が食べると病気になってしまいます」
というようなことが書かれている。
 

別に間違ってはいないが、本当にエサをあげるのを
止めさせたいなら、もうすこし表現にドライブが
あったほうがいい。たとえば、

 
カモが病気なってしまいます!エサをあげないで!
 

くらいは言ってやりたい。
そして、「人間の食べ物は~」と続けて理由を
述べれば納得もしよう。ついでに困った顔した
カモちゃんの絵でも描いておけばばっちりだ。
(それでもやめない人は、きっと池に
落としてもやめないと思う)

 
行動させたいなら、心を動かせという。
つまり感情を動かせ。すなわち
喜怒哀楽を起こさせるということ。

 
この場合、カモがかわいそう(哀)と思わせる
ことで行動を促す(エサあげをやめさせる)
というわけだ。

 
言いたいことはとりあえず伝えていますけど
の段階で終わるか、ぜひその気になって
くださいの段階までもっていくかは、
ちょっとした表現の差、ドライブのかけ方の
差といってもいい。
(表現にドライブなんて言い方は、
僕以外はしないと思います。表現を強調する、
強さを増幅させるという意味で使っています)
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
「じっと座っているだけの部屋」
なんて、ありえません!

 
 
スウェーデン生まれのインテリアブランド
「イケア」の商品カタログ より。
何のことを言っているのでしょうか。

 
後にこんなボディコピーが続きます。
だからイケアは、実際の生活に対応できる
製品をつくっています。子供たちが汚れた手で
さわっても、友人がアームレストに乱暴に
腰掛けても、心配はいりません。キャビネットの
扉を勢いよく閉めても平気です。

 

なるほど、部屋の耐久性について

述べているわけです。
ボディコピーの次の段落では、
耐久性テストや品質保証といった、具体的な
取り組みが紹介されています。
 

別に、
すべての製品に耐久テスト、
10年間の品質保証付き。

というような事実を伝えるヘッドライン
でもいいでしょう。(素っ気ないけれど)

 
間違いではありません。しかし、そうした
特徴よりも、この場合はその特徴がある理由を、
「気づき」として示したほうが、商品の良さが
より強調され、欲望が刺激されます。

 
イケアのカタログでは、他にも
ドライブのかかったコピーをいくつか
見つけました。たとえば、


バターナイフが見つからない?
どんなに美しくても、
そんなキッチンは失格です。

 

キッチンの収納家具のコピーです。
小物も全部きちんと収納、
これで、キャビネットや
引き出しの中がすっきり。

の様なコピーでもいいでしょう。

 
でも、「バターナイフが見つからない」
なんて、よくありがちなことを言うだけで、
納得も増すのでは。

問題をクローズアップすることで、

その解決方法としての商品への
欲望は高まってくる…期待できます。

 
本やDVDを探しまわるのは
もう、うんざり?
なんでもすぐに見つかる
書棚にしませんか?

 

書棚やDVDラックのコピーです。
 これも同じタイプです。
「なんでもすぐに見つかる書棚」
といわれると欲望もむくむくと
わいてきます。
こんなコピーはどうでしょう。

 
新しい家具に買い替えなくても
いつでも気軽に模様替え

 

これも、
組み合わせ自由自在、
ユニットの配置換えで
お好みのレイアウトに。

というコピーでも意味は分かります。

 

でもメリットを強調した方が欲しくなります。
「新しい家具に買い替えなくても」と
「気軽に模様替え」がミソ。
節約志向でも賢い買い物をしたい人には、
効きの良いアピールになります。

 

いつでも主役はあなた。

あなたはこんな得をする、
そう言ってあげたいものです。
YOU & I.あなたあってのわたし。
これが友愛ってものです。ウソです。
 

さて、イケアの良さのひとつに
リーズナブルであることが挙げられます。
しかし、安いものはたいした品質ではない
という先入観は案外しつこいもの。
高価=高品質というのも然りです。
表現にドライブをかけるとは違いますが、
それを払しょくするのも大切です。

たとえば、このコピー。
 

高品質のナイフが、
かならずしも高価とは限りません。
 

もちろん、
切れ味長持ち、
モリブデンパナジウム鋼製
果物ナイフが699円。

でもOKです。

 

でも、100均ショップではもっと

安く買えます。そうであるなら、
この場合は高品質ですよとずばり
言った方がいいと思いますね。
安いでなく、この価格でこの価値が
提供できるイケアのプライドを
見せたいものです。

次のコピーも同じタイプです。

 
お子さまの安全は何より大切。
だからといって、高価な家具を選ぶ
必要はありません。

  

もちろん、そこに続くボディコピーでは
世界一厳しい安全基準に適合~と
その高品質ぶりをきちんと説明しています。

 
先入観、あるいは既成概念というのは
ガンコです。やっかいなのは、

真実を伝えるよりも、
消費者の中にある知覚。

これが商品選びや
購買時にハードルとなることがあります。
知覚を変えるのはかなり難しようです。
(それができれば、世の中はもっと
穏やかなはずですし)

 
だから、価格が相場や常識と比べて
高ければ、あるいは安ければ
納得のいく説明が必要になるわけです。
それをいうことで、商品とお客の間に立ちはだかる
偏見などのハードルを下げて安心してもらう、
それも低価格、高品質を標榜するならきとんと
言わなくてはいけません。

 
商品カタログのコピーを見ていると、
機能や特徴を素っ気なく表現している
ものが少なくありません。
手にとって見てもらえるという前提が
ありますからそうなるのでしょう。

 
CMのタグラインや印刷広告のヘッドラインは、
無視されるのを前提で考えますので、
つくる方も気合の入れ方がカタログの場合と
違います。(もちろん、予算も違いますから)
目立ってなんぼの世界です。

 
AIDMA(AISASでもいいですが)でいえば、
例外はありますが、CMや広告の場合、
おおむね認知段階のAttention(注意)から
Interest(興味、関心)にかけて
注力します。

 

しかしカタログの場合は
注力すべきは、感情段階のInterestから
Desire(欲求)がその中心領域となるでしょう。
とすれば、せっかくの機会を素っ気ない
出会いにするのはもったいないです。

 
見る人の気持ちをゆらしてあげましょう。
カタログを見て、ますます欲しくなった!
そう思わせたいものです。
(つまり、そこまで考えてはつくられて
いないケースの方が多いと感じているわけで)

 
せっかく、ペナルティエリアまでボールを運んだのです。
シュートを決めたい、ならばボールは最低ゴールの枠内に
飛ばしたいものです。コピーも一緒です。

 
日本代表(サッカーです)の決定力不足の解消は、
なかばあきらめムードですが、
「コトバ強さ倍増計画」で、決定力のある
商品カタログはなんとかなるのではないでしょうか。
そんなことを伝えたかったのでした。

 
あれれ、途中から文章がですます調になりましたが、
直すのが面倒なのでこのままにしておきます。
許してたもうれ。