飢えた未亡人‘私を悦ばせて’ | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

飢えた未亡人‘私を悦ばせて’

なんだか、昭和のポルノ映画のような
釣りタイトルですが… 
 
WEBユーザビリティの第一人者、Jakob Nielsenの
レポート
によれば、
ユーザーがサイトを見るさいに特有の傾向があるそうで。
 
たとえば、
・左から右へ読む言語の場合、視線はF字で流れる。
※印刷媒体ではヨコ組はZ字、タテ組はN字と習ったものだ。
・閲覧時、ページの左半分に時間の69%を使う。
・ユーザーの読むテキストの量はページ全体の28%~20%
・ユーザーは流し読みをする。だから重要なキーワードは
最初に入れる。(最初の2語で勝負)
 
…と他にもあるけれど、かいつまんで言えば、
WEBのデザインやテキストのこしらえ方は
左サイドがカギとなることが分かる。
ユーザーは左サイドで、すべてを把握
しようとするのか。
 
そう考えると、ヘッドラインや見出しを書く場合、
最重要キーワードは左先頭にもってくるとか、
文脈なしでも意味が分かるようにするとか、
きわめて簡潔に短くするとか、
印刷媒体とは異なったセオリーで
対応しなくちゃいけないようだ。
  
最近みたネットのスポーツニュースの見出しだが、
ACミラン ベッカム後継に本田を指名!
とあった。イタリアの新聞なので「本田」は後ろに
下げれらている。
イタリア国内では、ACミラン>本田という位置づけ。
 
でも、これでは国内では見過ごしされてしまう。
WEBユーザビリティのセオリーに従うなら、
国内のニュースのヘッドラインでは、
本田獲り ACミラン、ベッカムの後継に指名!
と「本田」を主役とするべき。
国内のスポーツ紙(ネット版)でみた
本田獲りに動くミラン 評価はブラジルのエース以上
のように、最重要キーワードである「本田」を
先頭にもってくるようにね。
 
ものごとを考える時、押してもダメなら引いてみな
というように、いったん思考の大手門から
外れて、からめ手に回って考えると突破できることも
多々あるわけだ。
 
次のやつも、言ってみればからめ手を
ねらった逆サイド攻撃と言える。
この場合、コピーが正確なパスの
代わりになるわけだが。
飢えた未亡人の悦ばせ方
とでも言おうか。
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
女性のみなさん、
この夏ワールドカップから抜け出して
サッカーよりあなたに時間を費やしてくれる
男性のいる国、スイスに遊びに来ませんか。

  
 
スイス政府観光局のCMより。
2006年のサッカーワールドカップドイツ大会の
開幕前に行われたキャンペーンだ。
ユニークなアイデアということで
日本のメディアにも取り上げられたのを覚えている。
CMでは、登山ガイド、乳搾り…次々とスイスの
イケメンたちがまぶしい笑顔で登場するというもの。

 
コピーの日本語は、サッカーの代表チームの
選手や監督たちの言葉を集めた本、
「俺たちが戦う理由。代表選手200の名言
(いとうやまね著)」より抜粋。
 
キャンペーンの成果については分からないが、
ねらいどころといい、タイミングといい
うまいことを考えたものである。
 
サッカー未亡人(夫や彼氏がサッカーに夢中になって、
放置された妻や彼女たち)自体は、昔から言われている
もので、市場としてみると大きな儲けのチャンスが
あるわけではないように思われるが、ワールドカップ
によって、市場の拡大やニーズが高まることが
期待できる。チャンス到来というわけだね。
一見奇策のようだが、理にかなっている。
 
市場の逆サイド攻撃である。
サッカーを見ていると、大きくサイドチェンジを
する場面が出てくる。
ボール付近に敵も味方も密集してしまい、
攻める側からすれば、パスを通すことも、
ドリブル突破もできにくい状況だ。
 
だから、たとえば左サイドからポーンと
右サイドへボールを出す。
そこに味方が走り込む。あるいは先に
走ってパスを待つ。そしてそこから
攻撃の起点を作る。
敵のプレッシャーも少ないし、スペースも
あるので攻めやすい。
わざと敵を一方に引きつけておいて、がら空きに
なった逆サイドにふるなんて方法もある。
 
逆サイドにはチャンスがあると考える。
商機で言うと、特需を生むホットな追い風市場の
反対には、クールな無風のがら空き市場も
あるということ。
世の中がそれ一色になったりすると、案外
見落としされがちなんだろう。そんな中で、
ワールドカップに興味がない人だって
大勢いるんじゃないの?と考える人は賢い。
 
七色のパスを出すシャビや
セスク(←サッカースペイン代表)の
ように視野の広さと高い状況判断力を
持ちたいものである。
  
追い風市場は、チャンスも大きいが競争も激しい。
大失敗することもないが、労力のわりには
得たパイは小さいということもある。
 
しかし、その逆サイドとなる市場は大きくはないが、
参入が少ないために競争は緩い。その分、商売が
しやすいはずだ。
 
大きなパイを大勢で競い合って奪うか、
パイは小さいが競争が少ないところで
儲けるか。リスクゼロではないにせよ、
アイデア次第では場合によっては独占もできる。
(いやいや、両方ねらうことだってできる)
 
今回のワールドカップの時も、わざわざ大きな
スクリーンを借りて、ワールドカップ放映中!と
集客をする飲み屋もあったが、静かに過ごしたい
お客さんだっているはずだ。そこを取りこむ手も
あるわけだ。
 
だからね、よけいに不思議なのだ。
なぜNHKから民放まで、横並びに参院選の
特番をしたのか。
リスクが怖いのか、視野が狭いのか。
何も考えていないのか。
新作でなくていいからドラマや映画の
連続放送の方がよかったんじゃないの
と思うのだ。
 
おかげで、ワールドカップ決勝までの仮眠に
使えたので個人的にはよかったけれど。

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