見るのではなく、見ようとするのだ | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

見るのではなく、見ようとするのだ

お名前は忘れてしまったが、有名な動物写真家に
番組のレポーターが、よい表情を撮るコツについて
尋ねた。写真家の答えはよく見ること。

 
被写体をじっくり観察することだそうだで、
よく見ることでよい表情が見つけられる。
動物でも風景でもとにかく記録に残すことに夢中で、
被写体を見た気になってしまっているが、実際はちゃんと
見ていないことが多い。そのような話だったと思う。
 

あまり考えないで感じたままにシャッターを押しても
偶然に面白いものが撮れることだってあるのだろうが、
コントロールできない野生動物のよい表情を
押さえるにはその瞬間を感知することも必要なわけで、
それには被写体をよく見てよく知ることが大切だと
いうことだと思った。
 

そういうことで、近所のなじみのノラが熟睡

していたので、じっくりガン見してパシャ。

★コピーライターが思わず ! となったコピー。-sleepcat

ところで、よく見るとただ見ることの差は何だろう?
すぐに思いつくのは細部まで見る、すみずみまで見ること。
でも細部まで見るだけ、それでいいのかな?
想像力を働かすというのはどうか。

 
「もしかしたら」と仮説を立てたり、「なぜだろう」と疑問を
呈するといった対象についてあれこれ想像する、
思いめぐらすという深く見ることもそうではないかと思う。
 

よく聞くことも同様だ。言葉の意図は?とか
相手の立場になるとどうか?とか、いろいろと
想像力を大きくしながら聞くのは大切。

 
もっともそう言うのは簡単だが、いつも想像力を
働かせてものごとを見たり聞いたりしているかというと
そうなっていないわけだが、よく見てよく聞くと
見過ごしてしまいそうな機微をとらえたような表現が
生まれてくることがあるんじゃないか。
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
「何もいらないわよ」は、ウソです。
 
 
スーパー西友、サニーの母の日向けの

商品カタログ(去年)から。
ホンネとタテマエのギャップのすくい取り方が上手いし、
ちゃんとプレゼントしなくちゃと思わせる動機づけも
できている。

 
言われてそうだよねと気づかされるが、ボーっと
していると捕らえそこなう日常の些事だ。

相手(この場合は母親)への想像力を大きくする、
あるいは仮説を立てないと出てこないような表現だ。


コピーに限らず、小説やマンガ、映画での表現においても
こういう日常の中のささやかなシーンでの機微が
さりげなく描かれている場面と出会うと
作った人はよく見ているな―と感心する。
 

細部に神は宿るというけれど、きっと想像を働かす
センサーがひとつもふたつも違うのだろう。
とはいえ、考えてみれば日本人は「察する」ことに
長けている(とされている)こともあるから、
もともと想像を働かせることに敏感なのかもしれない。
そういう部分があることを自覚しているなら、
大切にしてください。

 
では、よく見る、よく聞く力をつけるには
どうすればいいの。
日々家庭や職場の中で想像を働かす環境に
身をおくことくらいしか思いつかない。
会話などコミュニケーションを通して磨くしかない。

 
大丈夫と言っているが、どこか心配そうな顔をしている、
どうして?もしかして…など思いやるように

接することを意識する癖をつけるしかない。

 
コピーなど広告の表現を考えるときも、
やっぱり商品を使う人のことをあれこれ想像するわけで
思いやるセンサーを日々鍛えておかないと、
いざという時に出てこないもの。

 
あとは、小説や映画で物語にたくさん触れる

というのもいいのかもしれない。会話や描写から

機微や心情を感じ取るということだ。

 
物語といえば先日読み返したマンガにあった言葉も
コツの一つかもしれない。

 
見ようと思わなければ見えないもの
ずっとそこにあっても―

(「誰かと見上げる花火/海街dialy3」)

 
ああ、そうか。見るんじゃなくて見ようとしないと

ダメなんだ。

 
それはそうと、この母の日向けカタログの最後の

ページには父の日向けの商品が紹介されている

のだが、そのコピーが

 
パパは、なんでもうれしい。
 

これも、よく見ているなーと思うのだが、
何ともぞんざいな感じがリアルで可笑しい。
母の日に比べて、どこか父の日はスケールが小さく、
それでいいのだという世間のコンセンサスも定着している。
だから仕方がないということか。
つまり種よりも、畑が大事ということでOK?



前述の漫画「海街dialy1~3/吉田秋生」
鎌倉を舞台にした四姉妹の話。
向田邦子の小説のようだと評されていたけど、
ありふれた日常の中にある家族の哀歓が
ていねいに描かれており、読んだ後は
なんだかやさしくなれる。
中でも「蝉時雨のやむ頃」はもうねぇ…
ティッシュがねぇ…。

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃/吉田 秋生
¥530
Amazon.co.jp


それとお知らせです。
先月、2冊めの著書が出ました。
<「売る」文章51の技>
前作の弟分にあたるもので、
今度はボディコピーなど長いコピーを
書くコツをまとめています。

 

久方ぶりにコピーの通信講座でも

開講しようかと思い、そのテキストにと

思って考えていたものなので、

基本的なことはほぼカバーしています。
目次や内容はコチラ


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