ゾンビと正義の話をしよう | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

ゾンビと正義の話をしよう

オタワ大学の研究チームによると
もし、ゾンビが発生したら人類は滅亡するという。
研究チームは鳥インフルエンザなど伝染病の
世界流行を予測するモデルを使って計算したそうで、
積極的にゾンビを撃退しないかぎり人間は
食べつくされるらしい。(つまり逃げるばかりでは全滅)
 
ゾンビの条件は、ジョージ・A・ロメロの映画のゾンビに
準じているようで、動きが遅い、首を切り落とすと死ぬと設定。
もし、「ドーン・オブ・ザ・デッド」のゾンビのように
ガンガン速く走られると、滅亡はひとたまりもないかも。
 
ありえないと思う?もちろん死体がむくっと置きあがって、
うがぁーと人にかぶりつくことは現状では考えにくい。
でも、どこかの研究機関が極秘開発したウィルスがなにかの事故で
流出して住民が汚染されてしまうなんてバイオハザードは
ありえる話じゃない?(流失しなくても、口蹄疫のように
いつのまにかってケースもあるだろうし)
 
そのウィルスに汚染されると、凶暴になって人を
襲い出す。噛まれて感染するとその人も同じ症状に…
そうなったら、どう生き抜くべ?
ウサギのように臆病な僕は、ゾンビ映画や小説を
観たり読んだりするたびに考えてしまう。
 
アメリカでは対ゾンビサバイバルの心得が確立されているようで
フロリダのある大学では対ゾンビマニュアルを冗談で作った
という話を以前ネットのニュース記事で読んだ。
抗議があったとかで、すぐに削除されたらしいけれど、
ゾンビ大国ならでは話だ。
トヨタもそこを意識したのかどうか分からないが、
これならゾンビに襲われても安心ね!といわんばかりの
クレイジーな広告を作っている。
$★コピーライターが思わず ! となったコピー。-toyotazombie
 
オフィシャルかパロディかは不明だが、アホっぽくていい。
ちゃんとヘッドラインにEquipped for a zombie attacked
ってある。さすがゾンビ先進国USA。
ちなみにこの広告が出回っていた頃、トヨタはアメリカで
激しいバッシングを受けていた。
 
怖がりなので、ホラーものはそれほど観たり読んだり
しないのだが、ゾンビもの(特にジョージ・A・ロメロ作品、
あるいはそれらの影響の多いもの)は、他と違って
後に残るんだな。いろいろなことを突きつけられるのだ。
それも、けっこう生きる上で大切なことを問われている
感じがする。
たとえば、どんなことかというと…
あ、その話の前にくだらないけれど、お茶目なコピーをひとつ。
 
 
★今回のビックリマークとなったコピー。
 
 
海に行けばよかった…
 
 
$★コピーライターが思わず ! となったコピー。-deadsnow03

そんな状況でそのセリフかよ。
く、くだらない…が、見過ごせなかった。
  
「処刑山―デッドスノウ」というゾンビ映画のフライヤーより。
なんでもノルウェーの雪山で、バカンスに来た若者たちが
冷凍されていたナチスの兵士ゾンビに襲われる内容らしい。
ご覧のとおり、ウケをねらいましたね?って
感じがありありだが、こういうセンスは大好き。
 
それでね、ゾンビものを観て何を思うかというと…
まず、正しい倫理や道徳をどこまで保てるかということ。
ゾンビが発生すれば、社会や街といったコミュニティは混乱に
陥って、おおむね崩壊する。
 
その時、正気を保てるかどうか。略奪まではしないと思う
(そんな奴はだいたいゾンビに食われる)が、自信はない。
無人になったコンビニから弁当を失敬するかもしれない。
その時はカウンターにお金を置いていこう(でも、お釣りはあきらめ
よう、もたもたしているとゾンビに食われるし)。自信はないけど。
 
それでも、盗みくらいは状況が状況だけに
仕方ないと言いわけできるが、最も倫理観を問われるのが、
非情になれるかということ。ゾンビものの最大の悲劇は、
時には家族や友人を殺す、あるいは見殺しにする場合があることだ。
ゾンビものでは、ゾンビに噛まれるとゾンビになる
というお約束がある。
 
どうみてもゾンビで、知らない人で、襲ってくれば
やっつけるか逃げるしかない。(武器がない時は逃げようね)
かりに、ゾンビになった上戸彩ちゃんと出くわしてもだ。
ちょっと触ってみようとか、YouTubeにアップしよう
なんて考えないようにしたい。スケベ心を出すと
ガブリとやられかねない。速やかに逃げるべし。
 
でもね、家族や友だちだったらそうはいかないよね。
ゾンビ映画にはそんな葛藤のシーンがよく出てくる。
たとえば、ゾンビになって親や子どもを襲うくらいならと
自ら死を選ぶとか、なんとか治療すれば治ると思って殺すの
をためらい、逆に食われてしまうとか、
 
どうせみんな死ぬのだからと悲観して自らすすんでゾンビ
になったり、食べられたりするとか、
仲間がゾンビに襲われているのをしり目に
泣く泣く逃げるとか…
 
と辛すぎる状況や悲痛な選択を
強いられる場合が出てくることがある。
もし、自分だったらどうするかと考えてしまうはずだ。
しかし、覚えていてほしい。ゾンビに情けは禁物。
 
まれに人としての記憶が残っている状態のゾンビが出てくる
場合があるが、ゾンビには感情や人情や愛情はない。
でも、食い気という根性はある。
生きたいなら非情になるしかないのだ。とてもつらいけれど。
 
しかし、僕たちはもっと厄介な状況に出くわす可能性がある。
怖いのはゾンビだけではない。場合によっては最大の敵が
人間になることも覚悟しないといけない。
 
コミュニティが混乱すれば、生存者自らが新たにコミュニティを
作る状況が出てくる。それが利他的精神に基づいていれば
いいが、エゴの塊のような利己的、排他的なコミュニティだったら最悪だ。
 
武器などでスーパーを占領して、法外な金を払わないと食べものを
売らないとか、若い女以外は助けないとか…そんな極悪な連中が必ず出てくる。
ゾンビから逃げようとはぁはぁ言いながら走っているのに、
そのそばを車で通って「がんばれや~」とか言うような人間だ。
いい奴、悪い奴、ゾンビの三すくみの中で生き抜かねばならない。
 
自衛隊や警察が機能していれば、人間同士のいさかいのリスクも
減るかもしれないがあまり期待できないだろう。
ゾンビ対応マニュアルなんてないはずだから、人を見たらゾンビと
思えといきなり撃たれるかもしれない。
 
以上のように、ゾンビという異物は人間社会に現れた瞬間、
恐怖のみならず、無秩序と混沌、人心の荒廃まで生み出すわけで、
僕たちは否応なしに必死のサバイバルを強いられるのだ。
 
そんな異常な状況だからこそ、道徳とは正義とはといった
普段それほど深く考えないことを次々と問いかけてくる。
(唯一、確かなことはフライパンは必要だということくらいだ。
フライパンはゾンビをぶっ叩く武器にもなるし、防具にもなる。
調理もできるし水も汲める。ヒマなときはテニスもできる。
もちろん汚れが落ちやすいテフロン加工は常識だ)
 
だからだろうか、ゾンビものを観たり読んだ後は、その終末感も
手伝ってかどよ~んと重い気分になりがちだ。
でも違った見方をすれば、ゾンビものって議論しがいのある素材だと思う。
 
哲学から危機管理のマネジメント、倫理やメディアの
あり様までおおよそ生きていく上で必要なことのほとんどを
語ることができるからね。
 
とくにロメロは自分の作品にそういうテーマを入れているし。
だから、つい考えてしまう。
たとえば、ゾンビが蔓延する世界における「正義」について、
ハーバード白熱教室のマイケル・サンデル教授はどうディベートを
展開するのか。これは面白くなると思うよ。
 
あるいはゾンビが発生した街で野球部のマネージャーをしている
女子高校生がドラッカーを読んでどうコミュニティを
マネジメントして生き延びるのか。サバイバルの教科書に
なるかもしれない。
 
ゾンビパニックは極端な状況だけに、テーマが強くあぶり出される。
そのため、より興味を持って深く考えことができる。
そのあたりが、他のホラーとは違うところ。たかがホラーかもしれないが、
人間を見つめる上で最良のショーケースではないかと思うのだ。
 
とはいえ、サンデル教授のような知見を持った人が、ディベートを仕切って
くれればいい議論ができそうなのだが、僕にはできません。
そんな話を飲み屋で話すと、だんだん周りもどん引きしていきますから。
「あのグチャ~っていう。そう、そこの牛モツみたいな感じ~」とか
言っちゃうからなんでしょうね。
 
マイケル・サンデル教授、ゾンビと正義について語ってくれませんかねぇ。
$★コピーライターが思わず ! となったコピー。-sandel
「ハーバード白熱教室」の最新オンエア情報
 
 
おまけ:ゾンビあれこれ
 
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)
リビングベッドではありません。リビングデッドです。
次作の「ゾンビ」とともにゾンビ映画の金字塔です。
監督はジョージ・A・ロメロ御大。
はじめにCMが入りますが、全編(字幕なし)観れますよ。
残酷シーンはほとんどありませんが、いろんな意味で怖い。


 
ゾンビではありませんが、飲み水から凶暴になる
ウィルが感染して、てんやわんや…ロメロ作品のリメイクです。
もうすぐ公開「クレイジーズ」

 
アイアムアヒーロー
青春マンガと思って読み始めたら、
あんた、ゾンビのようなのがゾロゾロと…
街や友人がすさまじい勢いで壊れまくっていきます。
人類が終わる時はきっとこんな風に…
花沢健吾先生の傑作です。目下連載中!
アイアムアヒーロー 4 (ビッグコミックス)/花沢 健吾

¥550
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高慢と偏見とゾンビ
ジェイン・オースティンの名作をマッシュアップした
怪作らしい。全米では「もしドラ」のように売れまくったとか。
やはりゾンビ大国USA。ナタリー・ポートマンが映画化権を取得、
主演なさるそうです。素敵です、ナタリー。
高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)/ジェイン・オースティン

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おまけ2
ゾンビが現れた時にやってはいけない10のこと
よい子はしっかり覚えましょう!

個人的にひとつつけ加えると…
11.たらたら歩いてはいけない
ゾンビがのろのろ歩くからといってバカにしてはいけない。
逃げる時は走る。カメをバカにしたウサギはどうなった?