5年前に戻れるならば… | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

5年前に戻れるならば…

女性に火をつけてあげる時は下から
持っていっちゃダメ。なぜか分かる?
むかし、バーでママから教えてもらった。
女性のタバコに火をつける時のマナーだと。


こっちはまだ若造で、分かるわけがない。
鼻毛を燃やすからと言いたいのをこらえて、
なぜですかと尋ねると、ママはライターをつけて
下から自分の顔を照らしうっすら笑いながら説明してくれた。

 
ほら、お化けみたいに不気味だし、それに老けてみえるのよ。

 

ある時、デザイン会社に行ったら、
知り合いのデザイナーがPCの画面を凝視しながら、
カチカチとマウスを鳴らしている。

 
何をしてるのかと尋ねるとデザイナーはうんざり顔で
お肌の修正と答えた。なんでも、女性立候補者の
選挙ポスターを作っているのだが、やっかいなことに
その女性はタレントなので、写真の修正依頼が
とても細かいとのこと。

 

小じわやシミはすべて消してほしいというリクエスト。
修正前の写真と見比べると、かなり若返っている。
しかし、修正箇所が多すぎるのか、収拾が

つかなくなっている。

 

修正箇所と周りの色をなじませようとしているが、

そのためCGイラストのように陰影や
質感のないのっぺりした顔になっている。

よせばいいのにテカリまで入れているので、

ますます作り物めいた感じになっているのだ。

 
あははと笑う。すると、CG整形顔の

女性候補者の目がぎろりとこちらを睨む。
こちらの非難を見透かしたように

PCのディスプレイから語りかけてきた。

 
ちょっとあなた、バカにしているけど老けて
暗い顔したおばさんに誰が期待するものですか。
人は私の若々しさと笑顔に希望を託して
一票を投じるものなのよ。見た目なのよ。
年をごまかしているわけじゃないし、
何が悪いっていうのよ。

 
たしかに。とがめる権利はない。
あれ、ポラと実物が全然違うぞ、指名料返せと
怒る風俗店の客ではないのだし。

 

若葉は黄金に勝る。(キリッ
何かの映画でジャンヌ・モローが若さの価値が
分かっていない娘に言っていたのを思い出す。
そうなのだ。若さの価値なんて、若いうちには
気づかない。人生も後半戦に差し掛かったときに
気づき、そして後悔するものだ。

 

あの日にかえりたい。時間よ止まれ。
それは無理な話ですよ、でも、
かえった気分になること
くらいはそう難しくないようで。
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
胸もと、-5歳へ。
 
 
カサつき、コナふき
きちんとぷるんと
-5才肌。
 
 
最近観た2つのCMで、偶然だろうけれど
「-5才」がキーワードになっているのを発見。
一つめはワコールのインナーのCM、
二つ目は花王ソフィーナのプリマヴィスタのCMより。

 
だいたい同じ時期に観たということもあって,
ちょっと印象に残ったのだ。会社やブランドを横断した
キャンペーンってことはないだろうけど。

 
以前にも花王ソフィーナはファインフィットの広告で
夕方差がつく-5才肌」と-5才を強調していた。
-5才が花王の商品開発テーマ?

 
たしかに、若々しいという形容詞よりは、

-5才の方が具体的でイメージしやすい

のだろうが、なぜ5才なのだろうかとつい考えてしまう。

 
女性は5才若く見られたがっているというデータが
あるのか、それとも2,3歳じゃ違いが実感しにくい、
でも10歳だときついし、5歳くらいがちょうど
いいんじゃない!というマーケティング戦略
からきたものなのか、それは分からない。
 
ともかく、5年という時間には侮れない重さがある。
年をとるほどに感じているのだけれど、
人間が徐々に身体に衰えを感じる30代から50代くらいの
5年というのは、歳月以上の負荷を心身に強いてくる。
しかも、負荷は年をとるほど重くなっている気がするし。

 
それでも科学と技術の進歩が人類の欲望を

ますます深くする。
昔からひたすら時間と重力に挑んできた。
いまさら止められない、人類の永遠のテーマだ。
 
いや、人類のなんとかという深い話でもない。
女性の若く見せる、キレイに見せる技術というのは
ずいぶんとレベルアップしてきたのだと思う。

 
とくに男だとなかなか見破ることができない

こともある。でも、さすが女性はよく分かっている。
あの人はキレイだとか、とてもあの年には

見えないなんて言うと、たいてい分かってないねと

鼻で笑われる。

 
そして、あそこはこうして、あそこは寄せて…など
不正を告発するかのように容赦なく
マジックのタネを明かしてくれる。

 
なるほどと感心したりもするのだが、

分かってうれしいかというとそうでもない。
たとえタネがあっても、イリュージョンを
楽しむ方がうれしいのだが。
 
世の中には知らないほうがイイこともある。
なんでも検索して知ることができる

時代だけれど、無理して知ったために

がっくりするのもちょっといやだ。

 
チョコを食べようとしているのに、そばから
そのチョコの原料のカカオは、実はアフリカの
貧しい村で小さな女の子が、ろくに食事も与えられず、
学校にも行かせてもらえず、しくしく泣きながら
採ったものですよ。それでも美味しい?と
言われたら、甘さはたちまち苦さに変わるだろう。

 
それはそれ、これはこれ。できれば、
チョコは美味しくいただきたいのが正直な気持ち。
もちろん、だまされるのは勘弁だが、
それはそれでいいじゃありませんかという姿勢で
さらりと受け止めるくらいにしておいた方が
しあわせなことだってあるんじゃないか。
 
女性の-5才への挑戦も同じだと思う。
彼女たちのとても他人には見せられない
バックステージの姿やマジックのタネを
辛口評論家のように分析しても

いい気分にはなれない。
 

劣化の激しさをメイクでごまかしているw

とか掲示板で読んでも、

なんだか心が荒むんですわ。
 
知ったために大きなものを失うこと
だってあるだろう。
そのことを僕たちは昔話で学んだはずだ。
「鶴の恩返し」を思い出そう。

 
人間の娘に姿を変えた鶴はこう言った。
「布を織っているときは、決して部屋をのぞかないで」
それを破ったために老夫婦(あるいは青年)は
娘とのしあわせな日々や収入を失ったはずだ。
 

見てはいけない、知らなくてもいい。
こうしたタブーのモチーフは昔から世界中の
神話や民話で使われてきた。
遠い昔から人類は、真実を知れば失うことを
伝えてきたのだ。
 
コピーライターのような仕事をしていると、
実に知らなくていいことばかりを

見たり分かったりする。
中にはちょっと言えないなとか、

言っちゃたら興ざめすることもたくさんある。
なおさら、知らないことのしあわせが分かるのである。
 
検察や警察の取り調べの可視化は必要だろうが、
-5才の可視化までは必要ないよ。
 

だから、いまだに女性のたばこに

火をつけていない。

 

 
ところで、女性のエイジングケア関連は

多岐にわたっているようだけれど、広告から

見る限り、男性市場は頭髪と下半身と

アッチ方面ばかり。

 

先日の50代のなんとかというクリエイターと

AKBの娘のチョメチョメ報道に触発されて、

「いつかはAKBのような娘と。」と昔のクラウンの
広告コピー(いつかはクラウン。)のような
気持ちになったオッサンが増えたのでは

ないだろうか。マカなどアッチ系サプリの

広告を打つにはいいタイミングだっただろう。
 
話は変わるが、-5才同様にこの夏に

よく見かけたのがキスを使った

CMやキャンペーン。
 
綾瀬はるかちゃん出演のパナソニックのデジカメのCM。
オンエアの度に食い入るように見てしまうので、
商品名や企業名がさっぱり覚えられません。
キスというよりも、口づけという感じ…うへへ。



★コピーライターが思わず ! となったコピー。-ayase

 

 

新聞広告でもやっていたけど、
ニュージーランド航空のキャンペーンサイト

一見、ソッチ方面のお店のサイトのようだが、
次々と社員の方が現れてキスの嵐を降らせます。
美女もいるけど、オッサンもいるので油断しないこと。


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-nzair

 
ガムのクロレッツのキャンペーンのバナー。
ガムはお口の恋人ですから。
★コピーライターが思わず ! となったコピー。-gum
 
 
 
キスの写真というと、すぐに思い出すのが
Elliotte Erwitt(エリオット・アーウィット)の写真。
Fairground Attractionというバンドの
アルバムのジャケットでみたのが初めて。
それ以来、好きになった。
日常の中のユーモラスな一瞬や物語の

浮かんでくるような写真が特徴だと思う。


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-kiss

Erwittは報道やポートレートの他に
広告写真も多く撮っていて有名なのが、
フランス政府観光局の広告(広告代理店はDDB!)


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-france02

 
Erwittのサイトはこちら
代表作はだいだい見ることができますよ!


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-bulll


 

 
ついでにもうひとつ、キスの写真でイイのが、
Herbie Hancockの「Speak like a child」
ジャズピアノの傑作だけど、中低音の
ゆったりとしたホーンのアレンジが素晴らしい。
この写真の雰囲気がサウンドになった感じ。

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