人間だもの、マイケルは正しかった | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

人間だもの、マイケルは正しかった

読みにくいフォントの方が記憶に残りやすい。
そんな実験結果が出たそうで。
読みやすいフォントと読みにくいフォントで
ある情報を読んでもらい、その後テストをしたところ
読みにくいフォントで読んだグループの方が
正答率がよかったとのこと。
 
読みにくいゆえに注意を払って読むので
その分、頭に入ったのではないかという
ことらしい。
 
以前、似たような話を聞いたことがある。
軽く脳を混乱させるときちんと
理解しようとして、真剣に
読んだり見ようとするらしい。
 
たとえば、(この文中のように)
文章で別に重要な箇所でもない
適当なところにアンダーラインを引くと
読み手はワケが分からないので、じっくり
何度も読もうとする。(アンダーライン箇所は
重要だという先入観を逆手にとるのかな?)
 
同じようにある部分だけ、フォントや大きさ、
カラーを変えたりする方法もある。
他にもわざと逆さまにしたり、右から左に
ヨコ書きしたりとかね。
注意を引くだけでなく、一度に理解させようと
するわけだ。
 
ただし、こうした奇策はデザインやレイアウトの
バランスの崩し方に絶妙なさじ加減が必要だし、
下手をすると、ただの読みにくい、見にくい
ものになるのであまりやらないようだ。
紙一重ということだね。
 
脳を混乱させるというのは、
脳はあいまいな状況が好きではない
という特徴を活かすやり方だとか。
 
あいまいゆえに正確に理解しよう
とする。そんなメカニズムを利用する
アプローチなのだろう。
すらすら読めるとか、見やすいのが
必ずしも、十分な理解につながるわけ
でないということ。
 
以前、グローバル展開している企業が、
広告で展開先(ベトナムだったかな?)の
言語で書かれたコピーを使っていたが、
これを目にした時も、???と反応して
思わずじっくり読もうとしたのを
思い出した。
 
また、イケアが初めて日本に出店した
ときも、その告知とあいさつを載せた広告の
コピーはたしか、スウェーデン語だったと思う。
これまた、む?む?む?と反応したものである。
 
関連しているかどうかは分からないが、
本当に大事なことは小さな声で言えという。
ひと言も聞き逃さないという態度で聞いて
くれるからとか。
そういえば討論番組で姜尚中(カン・サンジュン)
さんが、低い声で囁くように話すと、
場が静まりかえって、みな耳を傾けているよね。
 
以前、大きなスペースに、わざと
キャッチコピーを小さくした広告を
みたことがあるが、
同じようなねらいなんだろう。
大きな文字では書けませんが…
なんてコピーだったと思う。
 
直筆や手書き文字も同じことが
考えられる。
見た目が不格好であったり不揃いでも、
いかにも人がやりましたという
感じがするものには、なぜか反応して
しまう。どうしてか。
心が伝わるような気がするから?
 
本当の理由は分からない。
でも、今では当たり前になったが、
店頭のPOPも手書きの方が読まれるなんて
言われて、昔はわざと手書きのような
デザインやフォントを使って、ハンドメイド感を
わざわざ印刷で作っていたこともある。
 
ダイレクトメールの宛名も手書きの方が
開封されやすいと言われる。
これは実際に試したので本当。これも
パーソナルな手紙に見せるとというのが狙い。
いかにもダイレクトメール然としたものは、
はなから捨てられるからである。
 
そこまでやると、キツネとタヌキの化かしあい
のようになってくるが、次のような真っ向勝負
というときは、人は人らしくありたいもの
なんだろうか。
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
本当に大切なことを伝えたいとき、
人は、書くのかもしれません。

 
 
筆記具メーカー、パイロットの広告。
特定の商品についてではなく、企業の
メッセージを伝えるのが目的。
大切なことを大切な人に伝えたいとき、
ペンはあなたのそばにいますよというのが
伝えたいテーマ。
 
それを花嫁が父に書いた手紙という
モチーフのもとつづられる。
だから、ボディコピーが、
手紙を読む声が、涙で滲む。結婚式の
クライマックス。花嫁の手紙。
」からはじまる。
脚本のト書きのような文章だね。
 
このような物語を感じさせる表現は、読み手を
すぐに引き込む。つまり読ませるテクニックでもある。
別に物語にしなくても応用することができる。
 
たとえば、ある場面(例/商品がないことで困って
いる状況)の描写からはじめて、商品の必要性を
語ってもいい。目に浮かぶように描写
するのだ。(ビジュアルで表現してる場合は、
その必要はないよ)
 
それよりも、なぜパソコンではなく、わざわざ
ペンで書くのか。なぜ直筆の方が気持ちが
伝わる気がするのか。そのことを考え抜いたり、
深堀りしないと上のようなキャッチコピーは
なかなか出てこない。
 
なぜ?どうして?を問いかけながら、
真理や気づきを探すのは、とても頭を使うが
大切。うまいコピーも哲学者や科学者の
ように考えないといけないということ。
 
しかし、同じことを書いても
なぜ手書きとか直筆のほうが
うれしかったり、気持ちが入って
いる気がするのかねぇ。
うっすらとそんなことを
考えていたら、興味深い話に出会った。
 
人間は人間らしいものにひかれる
という仮説をもとにした研究がなされている。
アンドロイド研究で知られる大阪大学の
石黒教授は、人間を模したヒューマノイド
ロボットの姿が,どこまで人間に近づくべきか,
ロボットの見かけと動作がどのような関係を
持つのかといったテーマを研究しておられる。
(詳細は石黒研究室のWEBサイトを読んでね)
 
実験によれば、ロボットの見かけや動作が
人間に近づいていくと、親密度は増加していくが、
ある時点で新密度は急降下するという。
 
どうやら表情やしぐさ、感情表現といった人間らしい
細やかな動きがないと、いくら見かけが人間そっくり
でも無表情・無感情(たとえばゾンビみたいな)に
感じて、不気味に思ったりするようだ。
それで親密度が落ちるらしい。
 
そうしたメカニズムを解明しながら、人は人の
どこにらしさを感じるのかを探っている。
僕が気になったのは「人は人らしいものにひかれる」
ということ。
だから、手書きや手作りといった、どこか
(たとえば不格好であったり)人の匂いのするものに
親しみを感じてしまうのではないのかと。
 
こんな話もある。WEBユーザビリティの視線追跡調査
によると、ネットのディスプレイ広告、バナー広告では
ビジュアルに人の顔や人体の部位を使ったものが
よく注目されているという。
これも、人間らしいものに反応したのではないか。
 
こういうふうに見つめられると、たしかに無視できない。

$★コピーライターが思わず ! となったコピー。-chaild
 
健康食品は顔を使っているのは多い。
$★コピーライターが思わず ! となったコピー。-suntory
 
以前、人の顔のビジュアルはクリック率がよく
なるということをWEBディレクターから聞いた
ことがあるのだが、やはり「人間らしさ」が
カギだったのか。
 
昔、広告のビジュアルやパンフレットの表紙
には、人や動物など目のあるビジュアルを使うと
見てもらえる、捨てられないという「本当かいな?」
という話を聞いたものだが、案外とそうかもしれない。
 
これらのことは推測にすぎない。けれども
「人は人らしさにひかれる」という文脈で考えると
いずれも腑に落ちるんだね。
 
もちろん、見た目以外にも人間らしさを感じさせる
ものはある。手書き文字もそうだけど、
画一でない、均質でない、不完全や不安定といった
状態になぜか人の手や意思、あるいはメッセージを
感じてしまう。それもちょっと不思議だ。
 
建築家の安藤忠雄さんも面白いことを言っていた。
マンハッタンについて、こんな風に語ったいた。
「碁盤の目状の道路が区切る2028個のブロック。
そのシンプルかつ抽象的な基礎構造を
切り裂くように走るブロードウェイ。
たった1本の斜線が生む不調和が、人工の
都市に人間的な膨らみと奥行きを与えています

 
不調和を人間的な膨らみと言っているのは
興味深い。それは具体的にどのような
イメージなのかは少々分かりづらいが、
画一化されたものを崩すことに、人間らしさを
見出しているのは、手書きに人肌を感じることと
通じる気がする。
 
ともかく、人は人らしいものやイメージに
反応するのは確かのようである。
でも、なぜ人らしさにひかれるのか、
その理由についてはさまざまな仮説があるのだろう。
 
人は太古から恐れと不安を抱えて他者とつながりたいと
本能で感じていたからとか、大脳辺縁系がどうしたとかね。
もうこうなると、脳科学とか神経科学とか進化心理学の
領域の話になってくるので、僕にはさっぱり想像が
つかないのだが、あるいはすでに解明されているかも
しれないので、ご存知の方はぜひ教えてくださいませ。
 
ま、分からなくてもそれはそれでいい。
人間だもの、だから人間的なものにひかれるの。
それってヒューマンネイチャーみたいなものじゃない?
ということにしときます。
 
If they say
Why, why, tell 'em that is human nature

(Human Nature/Michael Jackson)
 
♪もし、どうして、どうしてと訊かれたら、
それが人間の性ってものだから~
マイケルの言うとおりかも。
$★コピーライターが思わず ! となったコピー。-michael
 
すいません、マイケルはそんなこと唄ってないです~
まだ、マイケルがただのキングオブポップだったころの
ライブ。思わず見入ってしまうくらいのパフォーマンス。
「Human Nature」、Rock with youと同じくらい好きな曲。