そんな脅しで言いなりになるとでも? | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

そんな脅しで言いなりになるとでも?

日本はもうダメ、崩壊している、危機的状況だ、
お先真っ暗…振り返ると、たぶん90年代半ば
あたりから、僕たちは「日本ダメ論」を刷り込まれ
きているが、うんざりすることに

それはいまだに続いている。
 
刷り込みの張本人は誰かというと、大半は
マスメディアである。
あんた、そんなネガティブなことばかり言い続けて、
自分たちでイヤにならないの?と思いもするが、
危機感や不安を煽らないと、視聴率も上がらないし
雑誌や新聞も売れないのだろう。
 
もっともメディアだってこの先、影響力も収益も
どんどん小さくなっていくようだが、そこのところは
見て見ぬふり。関心があるのはよその家だけ。
自分の家が燃えているにもかかわらず、他の家の
火事のことばかりを叫んでいる。まるでギャグである。
 
たまに日本は素晴らしいと絶賛するが、

それはスポーツや芸術で優勝や受賞といった結果が

出た時くらい。結局、日本っていいねと言っているのは
外国の人ばかり。
 
とにかく20年近く、僕たちは大げさな
「日本ダメ論」にいつも不安にさらされ、
いつのまにか自信を失ってきた。
今の若者は、夢がない、元気がない、低リスク、
超安定を望んでばかりと大人は非難するけれど、
彼らは小さなころから「日本はダメな国」という
空気が蔓延していた時代に、多感な時期をすごして
きたのだ。ノーフューチャーなのにどうして夢が持てる?
 
「オマエはダメな子だ」と言われて
育てられた子どもが大人になったからといって
急に自信や勇気が持てるはずもなく、
そりゃあ、安定志向になるだろうよ。

 
そうさせてきたメディアも含めて大人は
どのくらいそのことを自覚しているのかな。
 
希望を示すのが大人の努めでもあるのに、
大人たちさえも自らがまいた、「日本ダメ論」に
からめとられてしまっている。そんな感がする。
そう、きっと「日本ダメ論」キャンペーンは
効きすぎたのだ。
 
本来なら、それによって打開なり、問題解決へと
向かうことを期待したのだろうが、勇気より
不安や怯えの方が上回ってしまって、すっかり
気持ちを委縮させてしまったのではないか。
 
そして蔓延したのは、あきらめと後ろ向きの

マインドセット。そうならば、なんと罪なことを

してくれたものだ。
人を不安に陥れて、行動をうながすようなマネは
広告だけでたくさんだというのに。
 
 
★今回のビックリマークなコピー。
 
 
待つ時間は長い。
それが不安な時間なら、なおさらだ。
 
 
ソニー損保の自動車保険の広告より。
訴求の中心になっているのは、スピーディーな
事故対応。迅速に対応することで、不安にさせない
=安心してもらうというのが一番伝えたいこと。
 
こうした商品がないために被る不便や

不安をクローズアップするというのは

広告表現のセオリーだ。

 
その場合、困った状況、あるいはその時の気持ちを、
ユーザーのダイアローグ(一人称)、あるいは
第三者(三人称)で語ることが多い。
 
またイメージしやすいよう、あるいは注目させる
ためにビジュアルでそれを補完することも多い。
それも、思い切りデフォルメして。
 
このコピーは、第三者視点で困った状況

を表している。
第三者視点といっても、ユーザーの立場に

たった表現である。

 
くわえて、時間を待つのが長く感じられることを
不安な時間ならなおさらだと、さらに強調して
不安感のイメージを増強している。いいさじ加減だ。
うん、神は細部に宿るのだ。
 
ところで不安のイメージを最大化して恐怖に
高めるといったアプローチは、それなりに効果が
ある。心理学のテストでも証明されている。
そりゃそうだよね。不安をあおられて、これが
あればOKと商品を出されると欲しいと思うわな。
 
しかし、あまり恐怖を強調すると購買意欲は
マイナスになることがあるという。
恐怖度の高い広告と低い広告を見てもらって、
購買意欲の持続性を実験したところ、恐怖度の
高い広告の場合、見た直後は意欲は高まるが
時間がたつとすぐに消えてしまったという。
 
その理由は、あまり怖いとそれが苦痛になって
早く忘れたいという気持ちが働くためらしい。
反対に恐怖度の低い方が記憶の持続は
長かったとのこと。
 
つまり、恐怖で煽るのは効果的ではあるが、
イメージの増幅レベルのさじ加減が大切だ
ということだね。
 
たとえばこのハンドジェルの広告。
つり革や公衆電話に触るのが怖くなりそう、
ショッキングな除菌ジェルの広告


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-doornob


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-phonebooth
 

思い切り恐怖のアプローチである。なんだか怖いよ。
ホラー映画のポスターのようでやりすぎ。
恐怖の方が強すぎて、ハンドジェルが欲しい
というよりも、もう外では何も手に触れ
たくないという気になってしまう。
そんな別の問題を起こしそうだ。
さすが、えぐいホラー映画の多いタイである。
 

恐怖や不安はマイルドに。
こちらはイケアの広告。
イケアのイカす「気持ちが分かる」広告


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-ikea01
 


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-ikea02
  

自分で組み立てるのも大変だね!という

困った状況を面白おかしく表している。
それもわざわざ家具でSHIT(くそっ!)とか

oops(やっちまった!)文字まで作って、

ユーザーの気持ちを表現している。

(Fuckだったら、イケアのイメージもガタ落ちかも)

 
このアプローチも、こうなると大変(商品が

ないことで被るデメリット)だから、

心配な人は組み立てサービスもあるよ

と言いたいのである。

 
恐怖とまではいかないが、不安をユニークに

デフォルメ、この程度の方が共感しやすく、ちょうど
いい按配なのかもしれない。

 

ビビらせる時は、笑顔で脅す。そんなやさしさ?と

注意深さが必要なんだ。