みんな誰かの愛しい人 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

みんな誰かの愛しい人

きずな、つながり。
震災以降、こうした言葉を聞いたり、
見たりすることが多くなった。
私たちに何が起きたのだろう?

 
また地震の後、結婚相談サービスへの
会員登録が増えただの結婚にふみきった
カップルが増えたなんてニュースもあった。
婚活が盛況という文脈とはちがう話だ。
(反対に震災離婚も増えたという話も
あるようだけれど)
何がそうさせたのだろう。
 
きっと確信したのだ。
けっきょく、人はひとりで生きて
いくことなんてできない、誰かに
助けられ、誰かを助けながらでないと
生きていけないことを。

 
いくら世の中が便利で高機能化しても、
それが壊れれば、ひとりというのは
いかにもろく無力な存在なんだろうと
火を恐れるケモノのように
本能的に気づいたのだ。
 
おおげさにいえば文明というシールド
がなくなれば人間も動物のひとつであると
気づかされたのではないか。
 
かつて金八先生は黒板に「人」という字を書いて、
「いいですかぁ、人と言う字は人と人が
ささえあっている姿が文字に…」と解釈し、
人は人の間で人間として磨かれていくと
名言を残した。
 
また、子どものころご飯(白米)を少しでも
残すと、きまって親は「汗水たらしてお米を
作った農家の人に申し訳ないと思わないのか」
と言ったものだ。わたくしがすくすく育ったのは
どこかの農家の人のおかげだなんだ。
 
持ちつ持たれつ、小さなことから
大きなことまで、私たちはいつも誰かに
支えられている。たとえば東京に住んでいる
ものは、エネルギーや食べ物、製造業などで
東北にお世話になっている。

 
正直、震災がなければそのことに気づきも
しなかったし意識しなかったと思う。
東京で暮らすひとりとして恥ずかしく思う。
 
その東北はいまだにピンチである。報道では
原発のことの方が目立っているが、復興が着々と
進んでいるわけでもなく、いぜん苦難が
続いているという。
いったい僕たちは何をするべきか。多かれ少なかれ
そんなことを思っている方は多いと思う。
 
先日、山手線車内でみた中づり広告の
コピーはこんなメッセージだった。
いまボランティアに行けない人は
この夏、東北へ旅に行き、観光を楽しんで
ください。それもボランティアになるのですと。
 
JR東日本の広告である。モノは言いよう考えよう。
価値を示しかたしだいで、単なる言葉は
人を動かすメッセージへと変わる。
あなたの行動が、誰かの支えになる。
次のコピーもそうかな。
 
 
★今回のビックリマークなコピー
 
 
あなたが旅を楽しむことも、
きっと誰かの力になる。
 
 
JR東日本パスの広告より。
1万円でJR東日本全線が1日乗り放題
という切符らしい。
上越、長野新幹線も使えるから、
東北への旅のためだけというわけでは
ないが、基本スタンスは
東北への旅行や帰省などに使ってね
という、いわば復興応援の意味付けが
なされている。

 
もちろん震災によって大きく減収した
状況を挽回するためのアイデアでは
あるのだけれど。
 
1万円で乗り放題というなんとなくお得?
なメッセージだけでも、利用したいと
いう気はそこそこあるかもしれない。
でも見た人に働きかけるという点では
誰かの力になる、この部分に強さがある。
 
いま人々の心にある、東北復興の
手助けをしたいという気持ちが
購入の強い動機になるはず。
 
動機付け。またの名をモチベーション。
人が行動する上でもっとも大事な要素で、
コピーの場合でもそれは同じ。
広告で使われる場合は、選んでもらえる
理由や買う言いわけが示される。
 
さほど欲しいとは思わないものでも、動機付けを
示されればついつい…というのは誰にでもあるわけで
そういう人の心理や習性をうまく利用するのは
広告の表現ではよくあること。
 
東日本かどうかは忘れたけれど、JRはときおり
世の中の空気をうまく活かすという目端の
きいたメッセージを出してくることが多い。

 
たとえば、さまざまな商品がエコを叫んでいたとき、
移動や荷物を送る際は、クルマを使うよりも
排気ガスを出さない列車の方が環境にやさしいと
新幹線もエコであると訴求していたことがあった。
 
また、高速料金値下げの際は、渋滞でいやな
思いをするクルマでの移動より、時間通りで快適に
すごせる新幹線の方がいいでしょとしっかりと
アドバンテージを示していたことも。
 
このように状況をよくみてすかさず
アプローチを行い、有利な点を選ぶ理由として
挙げ比べてもらおうとしていたところは、
なかなか巧みである。機を観るに敏といっていい。
 
ところで、動機付けの表現やアプローチは
いろいろとあるが、絆やつながりといった
関係性に乗じた表現もそのひとつ。
少し前に見た人間ドックのバナー広告には
こう書かれてあった。
 
自分だけではありません。
大事な人のための「あなたのカラダ」です。
 
人はみな意志が強いわけではない、
というよりも弱い。自分のためだけでは
がんばれないことがある。
けれども、家族など大切な人のためだと
違ってくる。きっと思った以上に
モチベーションがアップするはず。
 
たとえばあなたが何かスポーツ選手だ
として、試合に好きな人が応援に来ている
場合とそうでない場合とでは、気合の
入りようが違うのではないか。
そうした他者との関わりを意識させることも
また人を動かす強いメッセージとなりえる
というもの。
 
人は本質的には孤独である。
生まれた時からその寂しさを知っている。
だから、恋をしたり仲間を求めるのだ。
と、昔観た情報番組の中で司会者が言っていた。

 
フランスのなんとかいう小説家の言葉らしい。
いかにもフランス人がいいそうなことだと
思ったものだが、たんに司会者が不倫を
正当化するための言いわけに使っただけで
あった。
 
それでもなんとなく腑に落ちるのは、
人がまだ類人猿だったころ、
最初に生まれた感情が「恐怖」だった
(らしい)からである。
自然や外敵の脅威から身を守るには、
危険を知る=恐れることが重要になってくる。

 
人は協力し合ないと生存できないことを
本能的に知っていたのだろう。だから群れを
作って生きてきたのだ。DNAがそうさせた。
人は社会的な動物なのだ。
 
介在するのが利他的精神であれ、
ある種の打算であれ、やはり人は誰かに
助けられ、誰かを助けて
いないと生きていけない。

 

だから意識的にせよ、無意識的にせよ
きっと人はその誰かを求め続けているの
ではないかと思う。
さびしいから死ぬのは、ウサギだけではない。
人もまた然りである。
 
そんなことを思っていたら、
「Everybody needs someboday to love」
という曲を思い出すした。
ソロモン・バークのヒットで知られる
ソウルクラシックで、ストーンズも
ブルースブラザースも唄っていた。

 
誰にだって愛する人が必要なんだ♪
人はひとりでは生きていけないことを
分かっていないと、このような曲は
生まれなかったんじゃないか。
 
紹介したJR東日本のコピーは、JRの駅の
スタンドにささってあったリーフレットに
載っていたものである。
実はそのすぐそばにも「誰か」という言葉が
使われたコピーの載ったリーフレットがあった。
内容は自殺予防、いのちの電話の案内で、
表面にはこんなコピーが。
 
誰かに話すことが、生きるチカラになります。
 
先日あった発表によると、今年5月の自殺者数は
前年比17.9%増、3281人で、前年同月に比べ499人増。
とくに大都市圏に多く、一番多い東京都で325人と
前年同月比70人増とのこと。
 
ある調査では、戦争や大災害、サッカーのW杯などの
スポーツイベントといったなにか国民全体がひとつに
まとまるような状況の時は、自殺者が減るという。
でも残念ながら、今回に関してはそうはならなかったようだ。
 
復興とか、みんなでひとつになろうという言う声が
日本中で高まっていた時期だったのに。
自ら命を絶つ理由は、人それぞれだろうから
ひとくくりにはできないが、
孤独や孤立によって絶望的な気持ちになって
死を選ぶことも多いときく。
 
人はつながっていないと辛くて
生きていけないのだ。
あるときは誰かを求め、あるときは求め
られる誰かになるということは
生き方の根本にかかわってくるのだろうな
と今回ほど強く感じたことはなかった。


★コピーライターが思わず ! となったコピー。-you'llnever
 
人に迷惑をかけてはいけませんと
誰もが言う。たしかに正論なのだが、
それでは辛い。
いいんじゃない、きつい時は少しくらい
迷惑をかけても。
 
震災から三カ月、3月11日以降、自分も含めて
私たちに何が起きたのだろうと考えてみた。
 
 
さて、ボランティアも東北旅行へもなかなか
行けない方にはこんな方法はどうだろう。

GoogleとYouTubeが、「日本営業中!」という
キャンペーンをやっている。

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